Biz Law Hack

日系大手所属の弁護士のブログです。
別のブログで半匿名で気が向いたことを書いてきましたが、 心機一転、読者のことを考えてブログを書いてみます。
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February 2013

金融商品取引業者に関する規定は、特定投資家との関係では一部緩和されています。

これについては金商法45条が規定していますが、条文を引くのが面倒なので、一目見てだいたいが分かるように整理してみました。

勧誘の相手方との関係
  • 第三十七条(広告等の規制)
  • 第三十八条第四号から第六号まで(不招請勧誘・拒絶後の勧誘の禁止)
  • 第四十条第一号(適合性の原則)

申込みを受け、又は締結した金融商品取引契約の相手方との関係
  • 第三十七条の二(取引態様の事前明示義務)
  • 第三十七条の三(契約締結前の書面の交付)
  • 第三十七条の四(契約締結時等の書面の交付)
※ 顧客からの個別の取引に関する照会に対して速やかに回答できる体制が整備されていない場合には、特定投資家に対しても37条の4の適用有り。
  • 第三十七条の五(保証金の受領に係る書面の交付)
※ 顧客からの個別の保証金の受領に関する照会に対して速やかに回答できる体制が整備されていない場合には、特定投資家に対しても37条の5の適用有り。
  • 第三十七条の六(書面による解除)
  • 第四十条の二第四項(執行方針等を記載した書面の交付)
  • 第四十三条の四(顧客の有価証券を担保に供する行為等の制限)

投資顧問契約の相手方との関係
  • 第四十一条の四(金銭又は有価証券の預託の受入れ等の禁止)
※ 分別管理体制が整備されていない場合には、特定投資家に対しても41条の4の適用有り。
  • 第四十一条の五(金銭等の貸付け、又はその媒介、取次ぎ若しくは代理の禁止)

投資一任契約の相手方との関係
  • 第四十二条の五(金銭又は有価証券の預託の受入れ等の禁止)
※ 分別管理体制が整備されていない場合には、特定投資家に対しても42条の5の適用有り。
  • 第四十二条の六(金銭又は有価証券の貸付け等の禁止)
  • 第四十二条の七(運用報告書の交付)
※ 運用報告書に記載すべき事項に関する顧客からの照会に対して速やかに回答できる体制が整備されていない場合には、特定投資家に対しても42条の7の適用有り。


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まえに、キャリードインタレストとは何か、というエントリを書きました。

でも、今読み返すとわかりにくいので、改めて本質がわかるように書いてみます。
ちょっとまどろっこしいですが、一つずつお付き合いいください。

柿の木組合

柿の実を食べたい猿と、柿の木の木陰で休みたいカニが、柿の木を育てる組合を作ったとします。

二人でお金を出し二人で働いて、柿の木が育ちました。

猿は柿の実を食べ、カニは木陰で休みます。

この柿の実を食べる権利と木陰で休む権利は、成功報酬がどうのこうのっていう話ではなく、組合の持分の内容ですよね。

柿の木販売組合

猿とカニは、たくさんの柿の木が育ったので、何本かの柿の木を切って売ることにしました。

柿の木の代金のうち、猿は3割を受け取り、カニ7割を受け取ることにしました。

これも成功報酬ではなく組合持分の内容ですよね。

猿がGPに

カニはけがをしたため、働くのをやめました。

それでも、カニは最初に出資をしているので、柿の木の代金のうち8割が猿に、2割がカニに分配されることになりました。

これも成功報酬って訳ではありません。組合持分の内容です。

桃の木販売組合

猿は犬と桃の木販売組合を作りました。

猿は1割お金を出し、犬が9割お金を出します。
その代わり、猿しか働きません。

まず、猿は実を食べます。犬は木陰で休みます。

また、桃の木の代金のコスト分は出資割合に応じて分配されます。
そして、利益のうち5割が猿に、5割が犬に分配されます。

これもきっと組合持分の内容ですよね。
組合からの利益の分配方法について当事者間で合意しているだけです。

投資組合

猿は猫と投資ファンドを作りました。

猿は1割お金を出し、猫が9割お金を出します。
その代わり、猿しか働きません。

まず、猿は管理報酬(2%)を受け取ります。犬は優先配当(8%)を受け取ります。

また、投資を回収した資金のうち元本部分は出資割合に応じて分配されます。
つぎに、犬は投資利益のうち優先配当(8%)を受領します。
そして、残りの投資利益のうち5割が猿に(キャリード・インタレスト)、5割が猫に分配されます。

これもやっぱり組合持分の内容ですよね。
組合からの利益の分配方法について当事者間で合意しているだけです。

まとめ

といことで、キャリード・インタレストは組合持分の内容であることがわかりましたでしょうか?

本質的に成功報酬ではないのです。成功報酬でも似たような経済効果が得られるだけで、本質は違います。



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1.空売りとは何か

空売りとは、以下をいいます。
  1. 手持ちの有価証券がないのに売ること。
  2. 有価証券を借りて売ること。
  3. 有価証券をもっている場合でも、その有価証券を売付け後遅滞なく当該有価証券を提供できることが明らかでないのに売ること
  4. 上記1~3の委託等(媒介、取次ぎ又は代理の申込み)をすること
  5. 上記1~3の受託等(媒介、取次ぎ又は代理の申込みを受ける)をすること
投資家が業者に申込みをすること自体も「空売り」に該当します。
業者が投資家の申込みを受けることも「空売り」に該当します。

金商法162条1項1号、金商令26条の2です。

2.ネイキッド・ショート・セリングの禁止

空売りした場合、相手方に売った有価証券を渡す必要がありますが、その有価証券を手に入れる目処が立っていない場合をネイキッド・ショート・セリングといいます。

投資家は、業者に対してネイキッド・ショート・セリングでないことを明らかにする義務があります。

業者の側でも、ネイキッド・ショート・セリングでないか確認し、ネイキッド・ショート・セリングの場合には取引を止める義務があります。

業者の関与としては、取次ぎにより空売りを行う場合と、空売りを行う業者に対する委託を取次ぐ場合がありますが、両方の業者に義務が課されています。

金商令26条の2の2です。

3.空売りであることの明示

空売りを行う場合には、空売りであることを明示する必要があります。

投資家は、業者に対して空売りか否かを明らかにする義務があります。

業者の側でも、空売りかどうか確認する義務があります。

業者の関与としては、取次ぎにより空売りを行う場合と、空売りを行う業者に対する委託を取次ぐ場合がありますが、両方の業者に義務が課されています。

取次ぎにより空売りを行う業者は、取引所に対して空売りか否かを明らかにする義務を負います。

金商令26条の3です。

4.アップティック・ルール

空売りの価格についての規制です。

直近に取引所が公表した市場価格以下の空売りは禁止されます。

投資家は、市場価格以下の空売りの注文を出すことができません。

業者の側でも、市場価格以下の空売りをすることが禁止されています。

金商令26条の4です。

5.空売りの情報提供

0.25%以上の空売りポジションは、報告対象になります。

投資家は、業者に自己のポジション等の情報を提供することが義務づけられています。

空売りを行う業者に対する委託を取次ぐ業者は、相手方(空売りを行う業者)に情報提供を行う必要があります。

取次ぎにより空売りを行う業者は、取引所に対する報告が義務づけられています。

取引所は集めた情報を公表します。

金商令26条の5です。

6.日本版Reg M

また別の機会に。


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